Okayama Economic Review
Published by the Economic Association of Okayama University

Online ISSN 2433-4146
Print ISSN 0386-3069

事業投資の総リスク・追加個別リスクの評価について -利害関係者重視企業の場合の評価方法-

小山 泰宏 岡山大学
抄録
機関投資家が資産運用としての証券投資を評価する場合と異なり、企業が事業投資を実施するかどうかの意思決定を行う場合、市場リスクのみをリスクとして評価するのは企業の実情に添わない。たとえば、企業の規模に比較し、取り上げる新規案件の規模が非常に大きく、仮にその案件が失敗した場合に企業自体の存立も危うくなるような場合、市場リスク以外に案件が抱える総リスク(total risk)の評価も重要な意思決定上のポイントとなるであろう。特に主要株主が分散投資していない集中投資家やオーナー経営者である場合、あるいは日本企業のように企業に経営資源をコミットしている経営者や従業員等の利害関係者(stakeholders)の立場も考慮している場合には、事業投資の意思決定を行う際、市場リスク料に追加個別リスクも含めた総リスクを評価して意思決定を行うことが求められるであろう。総リスクに含まれる追加リスク料としては、例えば、企業規模に伴うリスク料、業界別リスク料、カントリー・リスク料等が指摘され、実証的な計数化や検証がなされてきている。リスク評価の方法としては、リスク料をリスクフリー・レートに追加したリスク調整割引率で期待キャッシュフローを割り引いて現価を求める方法と、期待キャッシュフローからリスク額を控除した確実性等価を求め、リスクフリー・レートで割り引いて現価を求める方法がある。前者の方法は「リスク調整割引率法」であり、実務では「Build−up法」や「追加リスクを加えたCAPM 法」が用いられている。後者の方法は「確実性等価法」であり、理論的には前者よりも優れているとされるが、実務ではあまり採用されていないのが実情である。この研究ノートでは、①リスク調整割引率法で割引率に追加する追加リスク料と、確実性等価法で控除される個別リスク額の相互の関係を検討し、案件評価における両手法の互換性を検討した。また、②実務上必要となる、追加個別リスク料の見積もり方についての検討も行った。最後に、③利害関係者を重視した企業の事業投資の意思決定または評価基準についての検討も行った。
ISSN
0386-3069
NCID
AN00032897