岡山大学大学院教育学研究科 Acta Medica Okayama 1883-2423 171 2019 教員養成制度の国際比較研究 1 12 EN Masanobu ONOUE Kazuaki KAJII Masayuki KAWANO Saho AKINAGA Miria SERA Yunjia WANG  本研究では現在の日本において喫緊の課題である教員の働き方改革について,現行の教員養成制度と諸外国の教員養成制度について取り上げ,研究対象とした諸外国の教員養成の歴史を踏まえて比較・考察を行った。その結果,日本では教員養成の高度化が進んでいないことなどが明らかになっただけでなく,教員養成制度を改革することで新任教員だけでなく現職の教員にとっても良い影響を及ぼす可能性があることがわかった。長時間労働,新任教員の依願退職者数の増加など多くの課題を抱えている日本において諸外国の教員養成制度は,これからの教員養成について示唆を与えている。 No potential conflict of interest relevant to this article was reported. 教員養成制度 国際比較 日本 アメリカ フランス 中国
岡山大学大学院教育学研究科 Acta Medica Okayama 1883-2423 168 2018 外国人による近代日本見聞の特色 : イギリス人旅行写真家 ベンジャミン・ストーンの場合 11 37 EN Kazuaki Kajii Division of School Education, Graduate School of Education, Okayama University 近代日本に残る近世的伝統とその刷新としての西洋化が混交ないしは相克する位相は,他者としての外国人の目線をそこに投じるとき,より浮き彫りになる側面がある。19 世紀末,近代初期の日本において,どのような文化や伝統をめぐる変化が進みつつあったのか。本稿では,イギリス人旅行写真家のベンジャミン・ストーンが1891 年の日本滞在時,本国の家族らに宛てた手紙を検討し,彼が語る日本で得た経験と観察の内容を考察する。 No potential conflict of interest relevant to this article was reported. 近代日本 ベンジャミン・ストーン 手紙 伝統 変化
岡山大学大学院教育学研究科 Acta Medica Okayama 1883-2423 168 2018 近代中国における教員養成制度に関する一考察 1 9 EN Masanobu Onoue Kazuaki Kajii Akiko Okugawa Yuhan Na  本稿は近代世界における教員養成の思想と制度の比較研究の一環として,近代中国,具体的には中華民国期における近代的な教員養成制度の発展について取り上げ,まずはこれを対象とした日本における先行研究を整理し梗概を示し,あわせて清末期から中華人民共和国建国に至る近代中国における教員養成制度発展の歴史的特徴を検討した。清末から中華民国初期の学校制度や教員養成制度の構築にあたっては当時の日本の影響が強く認められるものの,やがてアメリカの新しい思想と制度から多くの影響を受けつつ近代化が模索されていたのである。 No potential conflict of interest relevant to this article was reported. 教員養成 教育史 近代中国
岡山大学大学院教育学研究科 Acta Medica Okayama 1883-2423 163 2016 近世・近代移行期における国民教育の確立と教育観の変化 ─ 人的資本形成の前提としての近代学校 ─ 9 19 EN Kazuaki Kajii 本小稿は,19 世紀末から20 世紀初頭の日本における前近代的な手習塾(寺子屋)から近代的な国民教育への移行過程を考察するとともに,その教育の近代化がもたらす教育観の変化について論じるものである。近代において国民教育を行う機関であった学校は,教師が生徒に一斉教授を行う場であった。前近代の手習塾は,教師が生徒に個別教授を行う場であったことを考えると,大きな転換である。近代学校で教壇に立つ教師は,一斉教授を行う方法を心得る存在ゆえ,時代における新しい教師であった。  近代学校で一般化した一斉教授法は,教師による集団としての生徒の同時,同一の行為を強く求める方法であった。換言すれば,生徒の身体の制御と統制を必然とする方法であった。そして,この近代学校を通じて形成される制御と統制に馴染んだ生徒の身体は,人的資本の観点からすれば,労働市場の近代化と技能の標準化にとって有利な条件であった。 No potential conflict of interest relevant to this article was reported. 近代学校 国民教育 個別教授 一斉教授 人的資本
岡山大学大学院教育学研究科 Acta Medica Okayama 1883-2423 162 2016 日本におけるデューイ研究史の特色と課題 ─ どうデューイを批判的に摂取するか? ─ 15 26 EN Kazuaki Kajii Graduate School of Education, Okayama University  2016 年はジョン・デューイの『民主主義と教育』が刊行されて100 周年である。同書をはじめ,デューイの著作は,現在も私たちに影響を与えつづけている。彼の教育に関する思想と実践を,これまで私たちはどう研究し,どう摂取してきたか。本稿はその研究史の一断面として,紹介的受容から批判的摂取に至る過程を,近代日本における教育学の発達の過程に重ねながら捉えようとするものである。また,二元論的枠組みへの挑戦者としてのデューイ,教師教育改革におけるデューイ研究の位置という観点も交え,デューイ研究の展開と課題について検討を加える。 No potential conflict of interest relevant to this article was reported. ジョン・デューイ 研究史 批判的摂取 民主主義と教育
岡山大学大学院教育学研究科 Acta Medica Okayama 1883-2423 160 2015 1950年代初期日本における道徳教育の地域的展開 :教育史演習授業使用史料の検討から 11 18 EN Kazuaki Kajii  昭和戦後期という現代日本への移行期において,道徳教育はどのような地域的展開をみたのか。本稿は,教育史研究の一環として,鳴門市の小学校教師が試みた道徳教育の研究と実践に関する一事例を検討し,その時代的・地域的特色を考察するものである。学校所蔵史料 の調査と関係者への聞き取りにより,①教師による「教育即道徳教育」という理念の探求,②教師が「教育」を狭く学校や授業の範囲で捉えない新たな観点を獲得していく模索,③そして自らの道徳教育の実践を地域や住民を含み込む活動へと開け広げていく到達,という教 師による試行と展開の過程が,1958 年の「道徳の時間」特設以前にあったことを明らかにした。 No potential conflict of interest relevant to this article was reported. 昭和戦後期 道徳教育 学校教師 教育史研究